女の人は吃驚してるぅの方を振り向きました。
目が血走っていて、怖いくらいです。

「どうして、ですってぇぇぇ〜?!」

女の人は金切り声をあげました。

「一日は24時間しかないのよ!
 やらなきゃいけないことが山ほどあるのに、寝てる暇なんてないのよ!」

「でも、食べなきゃ生きてはいけないし、眠らなくちゃ生きてはいけないよ」

るぅの言葉に彼女はフンッと鼻でせせら笑いました。

「一日三時間も寝れば充分よ。
 かの有名なナポレオンだってそうしてたっていう話だわ」

るぅは首を傾げます。

「あなたはナポレオンじゃないよ」

「ええ、えぇ、そうよ。
 確かに私はナポレオンじゃないわよ!
 でも、ナポレオンにできたんだから、私にだって できるはずだわ!」
「ナポレオンがほんとうに三時間しか眠らなかったって、どうして分かるの?
 あなたはナポレオンに会ったことがあるの?」

「…そりゃ、会ったことはないけど、いろんな本にそう書いてあるもの!」

「本に書いてあることは全部真実なの?違うでしょ?」

女の人はとうとう言葉を失くしてうずくまってしまいました。

「眠ったほうがいいよ。
 眠らないとイライラして、頭もぼぅ〜っとして、いいことないよ。
 ちゃんと眠ってから、すっきりした頭でいろんなことをやった方が絶対にいいよ」

るぅは彼女の側まで降りていきました。

「……だって、眠れないんだもん!」

女の人は真っ赤な目からボロボロと涙を流しながら怒鳴り散らします。

「眠くなってベッドに入っても、次から次へとやらなきゃいけないことが思い起こされて 不安になって胸が苦しくなって…眠れないんだもの!!!」
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