王子様の言葉に、女の子は片方の眉を吊り上げました。
「ふぅ〜ん、どんな事情があるって言うのよ?
言っとくけどね、今はこの森の一大事なんだから、生半可な事情だったら 許さないわよ!」
「森の一大事とは何事だ?
ボクたちは森の主木の精霊と会うためにやって来たのだ。」
女の子は箒から飛び降りて、王子様とジャンの前に立ちました。
「森の主木に何の用よ?
さっきも言ったけど、今、森はそれどころじゃないんだから」
「遠い昔に約束したのだ、会いに来ると…」
女の子は馬鹿にしたように笑いました。
「遠い昔って…あんた、まだ子供じゃない。」
王子様はむっとしました。
目の前にいる女の子だって、自分とそう歳が変わらないように見えます。
と、女の子は王子様の心を読んだかのようにこう言いました。
「言っておくけど、私はあんたよりも、後ろのお友達よりもずっと年上よ。
私はこの森を守ってる魔女なんだから。
人間とおんなじようには歳をとらないだけよ」
「ボクだって」
王子様はなんだかとても悔しくなって、大きな声で言いました。
「たしかにボクは子供だが、遠い昔に約束したのは事実だ。
お城の魔法の扉を通って、この森がまだ出来る前の主木の精と友達になっ て、その時に約束したんだ。
ずいぶん時間がかかってしまったけれど、今、約束を果たすためにここ に来たのだ」
女の子は「おや?」と言うように、小首を傾げしばらく二人を見つめて考え込みました。
「ふぅ〜ん、嘘をついているわけではなさそうね。
なら、かえって好都合だわ。
主木の精と友達だと言うのなら手伝ってちょうだい」
そう言うと女の子は何やら小さな声で呪文を唱えました。
すると、王子様とジャンの体が淡い光に包まれました。
ジャンは自分の体を見て、腰が抜けそうに驚きました。