ジャンは勢い良く立ち上がり、まずは父親である料理長の元へと走ります。
「親父〜、なにか食べる物を用意しておいてくれ」
それから、自分の部屋へと戻りベッドの下から命の次に大切な金貨入りの大きな瓶を取り出しました。
ジャンはしばらくその瓶を見つめていましたが、クッと歯を食いしばると大きな背負い袋にその瓶を入れ、手袋と傷薬と包帯を入れました。
厨房に行くと、料理長はすでに食べる物を用意しておいてくれました。
「栄養満点の暖かいスープと、片手でも食べられるサンドイッチだ」
「ありがと、親父…」
「王子様を助ける手段を思いついたんだろ?ほら、さっさと行って来い。そいでもって、 さっさと帰ってきて王子様を助けてさしあげろ」
ポットとまだ暖かい包みを受け取りながら、ジャンは胸が熱くなりました。
何も言わないでもわかってくれる人がいるのは幸せなことです。ジャンは勇気百倍です。
いつものように腰にロープを縛り付け、さぁ、準備万端です。
大広間の扉の前に立ったジャンは、大きく息を吸い込んで魔法の扉を開けました。
…目の前に広がるのは夕日の沈む海でした…ジャンは落胆して扉を閉めました。
次は、大きな滝の下、その次はどこかの田舎町…牧場…山の上…洞窟…倉の中…。
開けては閉めるの繰り返しです。
けれども、ジャンは諦めません。
諦めるわけにはいかないのです。
腕はしびれ、入れ替わり立ち替わりに現れる後景にジャンは頭がクラクラしてきました。
その時。
見覚えのある風景が現れたのです。草原です。見渡す限りの草原がジャンの目の前に広がっています。
「や、やった〜!ついにやったぞ〜!」
ジャンは扉を大きく開け、王子様を助けるために一歩踏み出しました。