心から楽しそうな女の子を見て王子様は嬉しくなりました。
もっともっと女の子を喜ばせてあげたくてたまらなくなりました。
「ボクの城に遊びに来ないか?」
「私はここから動くわけにはいかないの。ここで春を待っていないといけないから」
女の子に返事に王子様は少しだけガッカリしました。
けれども、それなら自分がここにいろんなものを持ってきてあげればいいと思いました。
女の子がここを離れなれないというのなら、寒くないように上質の毛布と暖かい飲み物、美味しいオヤツを料理長に作ってもらおう。
あとは自分の宝箱から女の子の気に入りそうな綺麗な小物をたくさん持ってこよう。そう思いついたら王子様はいてもたってもいられなくなりました。
早く女の子の喜ぶ顔が見たくてたまりません。
「ちょっと待ってて欲しい。
君の気に入りそうな素敵なモノをたくさん持ってくるから」
「待って」
女の子の止める言葉も振り切って王子様は走り出しました。
途中、ジャンに声をかける時にもそのスピードは緩めません。
「ジャン、一度城へ戻るぞ」
お城に戻った王子様は、まず料理長に体の温まる飲み物と美味しいお菓子を用意するように言い付けました。
そして、自分の部屋へと戻るとベッドから柔らかくて暖かい毛布をはぎ取り大きな袋に入れました。
それから、戸棚を開いて宝箱をひっくり返しました。
床いっぱいに広がった宝物の中から、虹色に光る小石や、緑玉の眼の鳥のブローチ、遠くのものが近くに見える魔法の筒などを選んで袋に詰めこみました。
そして、おやつを持ってきたジャンに大きな袋を背負わせました。
「よし、行くぞ」
「王子様、どこに行くのですか?」
「さっきの雪原に決まってるだろう」