王子様は急ぎ足で大広間の扉の前に立ちました。
女の子は喜んでくれるでしょうか。王子様の胸は高鳴ります。
そして、王子様は扉を開きました。
ところが、目の前に広がっている風景はジャングルでした。
王子様はびっくりして扉を閉めました。
そして、再び扉を開きます。
今度は大きな河が足元を流れています。
「な、何故だ…」
諦めきれずに何度も何度も扉を開け閉めする王子様に、ジャンは優しく声をかけます。
「王子様、この扉は一度閉めればその場所との繋がりは絶えてしまうんです」
王子様は体中の力が抜けてしまい、扉の前にへなへなと座り込んでしまいました。
「だって…だって…。
また来るからって…ボクはすぐに戻るから、待っていてと言ったのに…」
王子様は生まれて初めて後悔という気持ちを知りました。
「王子様」
ジャンは王子様の肩に優しく手をかけました。
「一人で寂しいって…あの子言ってた…ずっと一人だって…。
ボクにはいつもジャンがいるのに…あの子、あんなに寒いところにたった一人で …」
王子様の瞳からとうとう涙が一粒こぼれ落ちました。
「こんなことなら、もっと一緒に遊んであげるのだった。
…もっとそばにいてやればよかった…」
女の子が今もたった一人であの木の側に佇んでいるのを想像して、王子様はとうとう声をあげて泣き出してしまいました。