「この花の密は、栄養満点、これを一滴飲めば一週間は生きていられる程滋養 がある。その上、美味い」

「ぜひ、味わってみたいものです」

老人の説明にいちいち驚いてみせるノリノリのジャンに対して、どうも王子様はご機嫌斜めのようです。
老人の説明が進めば進むほど、王子様は不機嫌になってきました。

「そして、これが極めつけ。
 本物の黄金でできた花じゃ」

「黄金ですって〜?!」

ジャンは老人が指し示した小さな草に飛びつくようにして観察し始めました。

「本当だ!
 まだ蕾だけど、確かに黄金色をしてる!」

「だから言ったじゃろう。
 ここにはありとあらゆる不思議な草花が揃っておるのじゃ」

老人は自慢げにそう言いました。
それを聞いた王子様は、とうとうぷぃっとそっぽを向いてしまいしまた。

「兄さんはどうやら黄金の花が気に入ったようじゃの。
 土産はそれにするかな?」

「はいぃぃ〜、ありがとうございますぅ〜」

ジャンはあまりの嬉しさに顔を真っ赤にして飛び上がって喜んでいます。
そして、小さな鉢に黄金の花を移してもらい、大切に大切に抱きしめました。
老人は今度は王子様の方に向いて言いました。

「そちらの若いのは、どれにするんじゃ?」

王子様のご機嫌はますます悪くなる一方です。
王子である自分のことを『若いの』だなんてなんて失礼な輩でしょう。
それに、料理長が作ってくれた美味しい美味しいマドレーヌを分けてあげたのに感想の一言も言わないなんて、なんて失礼な輩でしょう。
何よりも王子様が気に入らないのは、王子である自分に向かって、すばらしい物を持っていると自慢することでした。
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