「ボクには何も欲しい物はない」

王子様の言葉を聞いて、老人はムムと眉をあげました。

「そんな筈はなかろうて…
 ほら、この兄さんにやった黄金の花は、売れば目の玉が飛び出る程の金額に なるじゃろう」

「ボクは黄金も金も有り余るほど持っている」

「ほほう…。 
 では、この風が吹けば美しい音色を奏でる釣り鐘花はどうじゃ?」

「城に帰れば、この世の物とも思えないほど美しい声でなく鳥がいる」

「それでは、宝石の実をつけるコレはどうかね?」

「宝石など山ほどある」

「むむむ、それなら若返りの…いやいや、これは若いのには必要ないか…おぉ、世界一の 密を持つ花はどうだ?」

「うっ…」

食いしん坊の王子様、これには少しだけ心が動きましたが、それでも首を横に振ります。

「いらん、いらんと言ったらいらんのだ」

ジャンはオロオロしながら、どんどんエキサイトしていく二人の会話を聞いていました。
とうとう、老人が怒りだしました。

「なんでそんなに意地を張るのじゃ?!」

王子様も怒鳴り返しました。
「うるさ〜いっ!!
 欲しい物は自分で決める。押しつけられるのは真っ平だ!」
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