雷澱と夕霧はそれぞれの得物を構えて、目配せをしてすっと気配を消した。
雷澱の武器は小刀。夕霧は鎖。
夕霧が鎖で鬼の動きを封じた所を雷澱が止めを刺す、それが彼らのやり方だった。
呼吸を整え、気を武器の隅々へと巡らしていく。
なま暖かい風が二人の体を舐め上げる。

すでに鬼は体の全てを引き上げていた。

シャキーン

黒ずんだ長い毒爪を打ち鳴らして、風の匂いを嗅いでいる。
血肉を引き裂くための禍々しい武器をうっとりと見つめて。
が、標的の匂いが感じられないことに鬼は戸惑うように辺りを見回した。
訝しげに鼻を鳴らし、次の瞬間には高い樹木の上へと飛び上がる。
枝がしなるだけの時も待たずに、次から次へと飛び移る。
生身の眼であれば追うのは不可能なくらい素早い動き。だが、心眼でそれを見る華月がそれを見逃すことはない。

「鬼が動いた。
 城へと最短距離で向かっている。
 そこで決着をつけてくれ」

頭に響く華月の声に二人は緊張を高める。
ザザッ。
頭上高く、葉の擦れる音が鬼の移動を彼らに教える。
月が鬼の影を映した瞬間、夕霧の鎖がその左脚に巻き付いて動きを止める。同時に雷澱が空高く飛び上がり、鬼へと斬りかかった。
どす黒い血しぶきが噴水のように吹き上がったその瞬間、鬼は右腕を振り下ろし鋭い爪で鎖を引きちぎった。

「そんなっ…」

信じられない光景に3人は眼を見張った。
「鬼狩り」の武器はただの武器ではない。
その人外の力が込められているからこそ、妖しを斬り結ぶことが可能なのだ。
たかが爪の一振りで断ち切られるはずがなかった。
が、華月の眼には映ったものは…突如鎖を斬られてたたらを踏んだ夕霧の元に斬られた鎖と共に降り立った鬼が襲いかかる姿だった。

「夕霧、よけろーーーっ!」

長い爪が夕霧の左肩を貫いた。
そのまま、夕霧の体を空高く上げ、ぶるんと振って近くの樹へと叩きつける。
血を吐き、そのままズルズルと倒れ落ちる夕霧を満足そうに見て、鬼は滴る血を細く長い舌で舐め上げた。
一瞬、鬼の動きがとまった。
不思議そうに首を傾げる鬼の背に、音もなく雷澱が小太刀を振りかぶった。
キンッ!
振り返りもせず、鬼の爪が小太刀を受ける。
体の向きはそのままに、鬼は首を回転させて雷澱を睨め付けた。
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