閃光が去ったあとに、鏡に映った俺の姿。
それは俺が謎の男と話したとおり忠実に再現されていた。
 
白いジャンプスーツに青いベルト、膝丈ブーツと手袋も青。
頭部を隠すマスクも青で眼の部分は赤、その背中に翻るマントは深紅。
そして、極め付け、そのマントには…黄金色ででかでかと「ミラクル・ハイパー・ウルトラ・ゴージャス・マスクマン(仮)」の文字が…。

「さぁ、急いで下さい」
 茫然自失の俺は、ブレスレットに急かされるまま、外にでた。
そこに待っていた物は、そのまま特写ヒーロー物にでてきそうなすんごいバイクだった。
ごてごてとオプションのついたすんばらしく運転しずらそうな、トリコロールカラーのレーサータイプのできそこない。
 
 …もう何も言うまい。
俺は黙ってバイクに跨がり、ブレスレットの誘導で現場に急行した。


 それが俺の初仕事。
このスーツを着ているときは、反射速度・力などが増幅されるらしく、たかだか普通人の強盗なんぞあっという間に捕まえてしまった。
 後日、銀行口座に俺にとっては多額の金額が振込まれていたから、あの謎の男のセリフもあながちデマではなかったらしい。
 

そして、俺のヒーロー人生が始まったのだ

 それでも最初の頃は悪くはなかった。
いろいろな事件に事欠かない時代だけあってそれなりに多忙だったが、仕事をこなせばこなすだけ俺の口座には確実に多額の金が振込まれた。
 そして、マスコミでは謎のヒーロー「ハイパー・ミラクル・ウルトラ・ゴージャス・マスクマン(仮)」の話題で騒然としていた。 
いまや俺は定職のないフリーターなどではなく、世間を騒がす英雄になった。

 俺は安アパートを引き払い高級マンションに落ち着いた。
そして、着る服はブランド物飲み食いする店も以前では門前払いを食らわせられるような一流店、連れ歩く女も一流…俺は一夜にして、一流の人間に仲間入りしたのだ。

 超高層ビルから見る夜景は美しい。
地上にばらまかれた宝石さながらだ。
そして俺の目の前にも、孤高たるヒーローにふさわしい美女が…。

 この三年の間に、ヒーローの美学にどっぷりとつかった俺には女を口説くセリフにも不自由はしない。

「君はこの夜景すら霞む程に美しい」

 美しい輪郭を形どった赤の唇が微笑み、二人のグラスが鳴る。

「君の美しさに乾杯」
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