「…トリコロール…」
 
 「赤・白・青、だね。 じゃあ、靴は?」

 「膝丈ブーツ」

 一瞬の間を置いて、男はにっこりとわらった。

 「今時、プロレスラーしか履いてないような、あれね」

 そう言いながら、メモ帳に書き込んでいく男の手元には、いつ出したのやら、12色の色鉛筆。

 「ね、マントいる?」

 「…付けてくれるんなら、もらうけど…」

 「マスクはどうする?」

 何やってんだろうなぁ〜…と思いつつ、俺は男の質問に一つひとつ律儀に答えていった。

 「マスクねぇ〜。
  …あった方が、恥ずかしくないような気はするけど…」

 「じゃぁ、大昔あったアレ風にしよっか。昆虫系の『仮面なんとか』ってやつ」

 ああ、もうどうにでもしてくれって感じ。

 「武器は…レーザー銃と、やっぱり剣は必要だよね」

 男はぶつぶつ呟きながら、何やらメモ帳にいろいろと書き込んでいる。

 「…ま、こんなとこだろ」

 メモ帳をパタンと閉じて、男は俺の手首にはめた怪しいブレスレットを操作しはじめた。

 「よし。これでOK。
  …今日から君は、世界の危機を救う『ミラクル・ハイパー・ウルトラ・ゴージャス・マスクマン(仮名)』だ」
 
そう言うと、男は俺の肩に両手を置いた。
 
「今後の君の健闘を祈る。じゃっ!」

 天を仰いで高笑いしつつ、男は一陣の風と共に去っていった。
何が何やら、何もわからない俺を残して…。
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