まぁるい、丸い地球には、古今東西、老若男女、数えきれない程の『正義のヒーロー』がいた。
今も昔も、そして、これからも…。

 「ねぇ、君。
  正義のヒーローになってみないかぃ?」 

そう話し掛けられたのは、今から3年前。
俺は、かろうじて大学だけは出たものの、定職につかず、気が向いたらアルバイトで金を稼いでその場を凌ぐ、というぐうたらな日々を送っていた。
 髪は伸ばし放題、服はよれよれのTシャツにすりきれたGパン。
 それに対して、話し掛けてきた男は、均整のとれた身体を、やたら値の張りそうな、しかし、大和民族には有り得ない色彩のスーツで包んだ、まるでどこかのファッション雑誌から抜け出てきたような男。
 
 その男は、やたら愛想のいい笑みを浮かべながら、こう続けた。

 「高収入、危険手当て付き。
  しかも今なら、なんとただで秘密のオプションまで付いてくる。
  その上、地球の平和まで守れる。
  世界中の人々から感謝されちゃうし、君自身は、平和を守ったという充実感を味わえる。
  いい事づくめ、言う事なし、だよね」

 そう言いながら、男は俺の腕をとって、メタリック・シルバーのブレスレットを巻いた。
一見すると時計のようだが、それにしては時間表示が無く、奇妙なボタンがいろいろと付いている。
 
 なんか妙な展開だなぁ〜…と思いながらも男のするがままにさせていたのは、ただ暇だったから。
…そう、俺はその時、人生に退屈していたんだ。
 
「君、『正義のヒーロー』といったら、ど ういうコスチュームを想像する?」

 男は、背広の内ポケットからメモ帳を出しながら、何が嬉しいんだか、にこにこ微笑いながら尋ねてくる。
 
 「…んなこと急に言われても…」
 
 「色は何色がいい?」
 
 もしかして、こいつ、危ない人種じゃなかろうか…。
治安の乱れたこの時代、ささいな事が原因の殺人事件なんて、有りふれていて話題にもならない。けれどそれは、自分に無関係の事件の場合。
俺は、人生に退屈していると言ったけど、人生終わらせるつもりは毛頭ない。
正義のヒーロー
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