「夢かもしれない…
私はずっとこの人が好きだったの…何年も前から。
彼、全然気が付かなかった…それでも、私、構わなかった…見つめているだけ でも幸せ だったから…」
そう言って女の人は震える指で自分の唇をそっとなぞりました。
「それが、夕べ急に誘われて…彼が私なんかに声をかけてくれるなんて…
今、ここに彼とこうしているだなんて…信じられないの…
どうしても、本当のことだなんて信じられないのよ」
視線だけは男から外すことなく、女の人は自分の体を大切な宝物であるかのように抱きしめました。
「今、眠ったら全部夢になってしまいそう…」
『だから、眠らないの?』
「だって、もったいないじゃない。
お願いだから報っておいて…私は今、幸せなのよ…とっても…」
るぅにはわかりません。
幸せだという女の人は、るぅにはとても悲しそうで今にも消えてしまいそうに見えました。
けれども、眠りたくないという人にはるぅは何もしてあげることはできません。
るぅは黙ってその部屋を後にしました。
シンとした冷たい夜空をるぅはフワフワと飛んで行きました。
るぅは何故だか少しだけ悲しくなりました。
おやすみなさい、子供達…よい夢を…。