男は煩げにるぅを見ました。
「夢、だよ。夢。これは俺の夢だ」
るぅは腹が立ってきました。
こんな得体の知れないモノが夢だなんてとんでもありません。
『どうしてこんなモンが夢だと言うの?』
「これだよ、これ」
男は自分の吸っているパイプをるぅに見せました。
「これで薬を吸えば、自分の見たい夢が見れるのさ。
現実の俺は本当の俺じゃない。こんなのは嘘っぱちだ。
本当の俺はもっとすごいんだ」
うつろな目で男は呟きます。
男の言うことが本当ならば、この奇妙な煙は薬のせいだということです。
ですが、るぅはどうしてもこれが夢だということを認めることはできません。
『こんな気持ちの悪いモノが夢であるわけない!
夢っていうのは、悲しいものでももっと綺麗なモノだよ。
こんな不自然で気持ち の悪いモノは絶対に違う!』
るぅの叫びも男にとってはどうでもいいことのようでした。
「だったら余所に行ったら?
これは俺だけの夢だ。現実なんてくだらない。
俺のことを本当に理解できる奴なんかいやしないのさ」
るぅは部屋を見回しました。汚い部屋を…男が目をそらした現実の部屋を。
そして、るぅは言いました。
『どんなに夢を見たって、それは偽りの夢だ
ちゃんと目を開けて現実を見てみればいい』