るぅの元に、切なくも暖かい信号が送られてきました。
るぅはさっそく出かけてみることにしました。

るぅがたどり着いたのは、ごく普通の住宅街のごく普通の一軒家。
猫の額ほどの狭い庭に赤いペンキのハゲかかった犬小屋がありました。
その主は鎖につながれて犬小屋の中で寝そべっていました。

『キミがボクを呼んだの?』

るぅの声に犬が目を開きました。
のそり、と大儀そうに立ち上がり、小屋からヨロヨロと出てきました。
大きな犬でした。
元は全身真っ黒だったのでしょう。歳をとって、鼻や目の回り、背中などに白い毛が多くなってきて今では白の分量が多い灰色の犬に見えます。

「あぁ、そうだよ、呼んでいたのはワシだよ。
 まさか、来てもらえるとは思ってもいなかったがな…」

嬉しそうに目を細める老犬を見て、るぅは首をかしげます。

『どうして?
 来ないと思ったのに呼んだの?
 ボクはいつだって呼んでくれる人のところに行くよ』

「おぉ、気を悪くせんでくれ。
 ただな、忙しいかと思っておったんだよ。
 たかだかこの老いぼれ一匹のために来てくれるとは思わんかっ ただけだ」

るぅはすーっと老犬の鼻先まで降りていきました。

『キミの望みはなぁに?』

老犬は鼻をクフンと鳴らしました。

「ワシはもう長くない。もう充分に生きた。
 ただな、死ぬ前に一度…一度でいいから、鎖とかにつながれな いで思う存分走り回ってみたいんだ」
自 由
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