月のない夜でした。
闇があたりを重苦しく包み、焼け落ちた家の柱が燻った煙をここそこで上げていました。
ここは戦場、昼間戦火にあった町でした。

るぅは、体を引き裂かれるかのような悲しい信号を受け止めながら闇夜を飛んでおりました。
崩れかけた家の隅で、すすり泣きが聞こえます。

「…パパ…ママ…目を覚まして…寒いよ〜、おなか減ったよ〜」

別の家では、幼い子供を抱きしめた母親が泣き崩れています。

「坊や、私の坊や…」

町外れの侵略軍のテントでは、分隊長が酔いつぶれています。
手には隊員と共に撮った写真、テーブルの上にはボトルが転がっています。

「俺の部下が3人も死んじまった…いい奴らだったのに…故郷でお袋さんやか わいい奥さん、小さな子供たちが帰りを待っていやがるのによ…」


国と国との戦争に加害者はいません。
いるのは被害者ばかりです。
この哀しみに満ちた信号が世界中の人々の元へと届けばいいのに…るぅは思いました。
そうすれば、きっと戦争なんてなくなるでしょう。
それとも…それでも、諍いは消えないのでしょうか…。

心の悲鳴を一身に受け止めながら、るぅは闇夜を大きく小さく回ります。
るぅの唱える呪文が小さな光となって、彼らの元へと届くように…。

おやすみなさい…哀しみも苦しみもすべて夢の中へ…。
戦場
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