時 間
真っ白フカフカの毛の羊『るぅ』の仕事は眠れない人を夢の世界へと案内することです。
ほら、今夜もまた…。

キリキリ、イライラ、キリキリ、イライラ…。
なんとも嫌〜な感じの信号が、るぅの元へと送られてきました。

『…なんだろう…?
 なんでこんなとんがった感じなんだろう…』

るぅは首をひねりながらも、信号を送る人のところへと飛んでゆきます。
どんなに嫌〜な感じでも、るぅは行かなきゃいけません。
だって、それがるぅのお仕事ですから。

白いタイル貼りの四角い箱。
数え切れないくらいあるたくさんの窓は、真っ暗でみぃ〜んな眠りの国の住人の様…るぅが呼ばれた部屋は、たった一つだけ深夜にも関わらず明かりがこうこうと付いていました。

るぅが窓から覗き込むと、女の人が一人大きな机の上で頭を抱え込んでいました。

「はぁぁぁ〜っ」

大きなため息をついたり

「がぁぁぁぁ〜、違うっ、違うわぁ〜っ」

髪の毛を掻きむしったり。
目の下にはクマ、肌は黄ばんでボロボロ、髪の毛はパサパサのモシャモシャです。
どうやら彼女が今夜の信号の発信源のようです。
るぅは彼女の部屋へとそぅっと入っていきました。

「ふわぁぁぁ〜」

彼女は大きなあくびを一つすると、慌てて頭をブルンブルンと振りました。

「いけない、いけない、眠っちゃ駄目よ」

彼女は頬を両手でパンパンと叩きます。

「どうして眠ってはいけないの?」

るぅは黙って見守ることがどうしてもできなくなって聞きました。
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