王子様が想像したとおりの、鈴を転がすような可愛らしい声で女の子は答えました。
「春が来るとどうなるのだ?」
王子様の問いかけに女の子は木の根本を小さな手で掘り返し始めました。
雪をかき分けて、土を掘って何かを掘り出しました。
それを雪できれいに洗って、王子様に手渡しました。
白い手に乗っていたのは、小さな赤い木の実です。
「春になれば木の実から芽が出るわ」
王子様は女の子にもらった木の実を大切にポケットにしまい込みました。
王子様には女の子が何を言いたいのかよくわかりませんでしたが、答えてくれたことの方が嬉しくて、意味がわからないことなどどうでもいいことに思いました。
「ここは寒くないか?」
「冬だから…」
「君は一人で待っているのか?」
「…そうよ、今はまだずっと一人…」
「寂しくはないのか?」
「そりゃ寂しいわ」
「なら、ボクが一緒に遊んでやる」
「嬉しい」
王子様はもう有頂天です。
二人はしばらく鬼ごっこや隠れんぼ(見晴らしのいい雪原なので隠れるところなんてありませんからふたりともこれにはすぐにあきてしまいました)、雪合戦、考えられるだけの遊びをして楽しく遊びました。
二人は真っ赤なほっぺをして、肩で息をしながらとうとう小さな木に寄りかかって座り込んでしまいました。
「あ〜、疲れた」
「そうね、でもこんなに楽しいのは生まれて初めて」