「これはうちの料理長が作ったマドレーヌだ。
きっと今までに食べたことのないくらいに美味しいぞ」
王子様はにこにこ顔で老人にマドレーヌを勧めます。
「それはそれは。
では、ワシからは、この庭園でとれたハーブティーを馳走することにしよう」
老人が傾けたポットから、黄金色のお茶が温められたカップへと注がれます。辺りに爽やかな香りが漂いました。
「ここはな、夢のハーブ園なのじゃよ。
ワシの自慢じゃ。どこにもない不思議な香草がここにはある。ここにないものはど こにもない」
大きく鼻を膨らませて言った老人の言葉に、ジャンもフムフムと頷きました。
「確かに…。見たこともないような草花がたくさんありますね〜」
「そうじゃろ、そうじゃろ。
ここに誰かが尋ねてくるのはきわめて稀なことなんじゃ。
話し相手になってくれたお礼に、あんた方にもあとで欲しい香草をそれぞれ分け てやるからに」
「本当ですか?」
珍しい物(高価で売れる物)がとても好きなジャンは顔を輝かせました。
「あとでこの庭園にある香草を説明してしんぜよう」
老人は言葉の通り、お茶の時間が終わったあとに王子様とジャンを連れて庭園を案内してくれました。
「この香草煎じて飲めば、十歳若返ることができるのじゃ」
「なるほどなるほど、若返りの薬草なんですね〜」
「そしてこれは、緑玉の実がなる…」
「それは珍しいですね〜」