扉を開けると、そこは草原でした。
気持ちのいい風が、膝丈の草をサラサラと撫でてゆきます。
どこまでも広がる草原を、一本の小さな道がどこまでも続いていきます。
王子様とジャンは、とりあえずその道に沿って歩き出しました。
細い道の脇には所々に小さな花が咲いていました。王子様は立ち止まり、ジャンに尋ねました。

「この小さな白い花はなんという花なのだ?」

ジャンは首を傾げました。
今までに見たこともない花でした。
城の庭でも、城下町でも、見かけたことのない花です。

黄金色を中心に乳白色の花びらが6枚。
花びらは外へと向かう程に透明になっていき、薄い紅色が縁取っています。

「申し訳ございませんが、ワタシには皆目見当もつきません…」

ジャンは自分の不勉強を恥じ入りましたが、王子様はそんなことは気にしません。

「ふむふむ、なんとも可憐な花だな」

そう言って、王子様はその花を一輪そっとポケットにしまいました。
しばらく行くと、庭園に出ました。
草原との境には低い煉瓦が積まれておりましたし、庭園に入る小さな木の扉もあります。煉瓦の内側には、明らかに誰かの手で手入れをされた美しい庭が広がっておりました。

王子様とジャンは顔を見合わせ、とりあえず庭園に入って行くことにしました。
白い敷石が敷き詰められた小道から、広い庭園をぐるりと一回りしてみると、小さな石造りの家があり、一人の老人が庭木の世話をしておりました。
老人は突然の訪問者に気が付くと、皺だらけの顔をほころばせてお茶に呼んでくれました。
そこで、王子様とジャンも料理長が持たせてくれたおやつを出して3人で食べることにしました。
『名も無き花』
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