きつく目を閉じてその瞬間を待っていた華月は、いつまでたっても来ない衝撃を不審に思って恐る恐るその目を開いた。
目の前には鬼が居た。
華月の胸を貫こうとする毒爪はその寸前で停まっていた。
華月の背後から胸へ強くまかれた輝夜の左腕。
その腕によって、華月は護られるように大きな胸に抱かれていた。
そして、華月の右肩からまっすぐと伸ばされた輝夜の刀が、鬼の急所を貫いていた。
暗い眼孔を見開いたまま鬼はその動きを停止していた。
「浄化」
輝夜の小さな呟きと共に、青白き炎が上がり鬼の体を包む。
さらさら…と小さな砂のように鬼の体が崩れていく。
白い噴煙が真っ黒な空へと静かに上がっていった。