「あ〜、わかったわかった。
 んじゃ、軽く青葉と梅の雑炊でも作るか」

わ〜いと両手を上げて喜ぶ華月の頭をふわっと撫でて、輝夜は台所へと姿を消した。
台所から聞こえてくる包丁の音を聞きながら、華月はふっと眼を閉じた。
明日の仕事に考えを馳せる。
体の傷はすでに完治していたし、肉体的には何の心配もない。
仕事内容と言えば、定期的に行われる封印のかけ直しで危険の度合いも高いものではなかった。
裕福な領地からの依頼なので、当然支払われる金額の額も高い。
毎年、里一番の使い手である「護り人」華月をわざわざ指名料を上乗せしての依頼であった。
場所が桜の樹の根本なので、長はことさら心配気だったが、いわば鬼狩りの里にとってのお得意さまからの依頼では断ることもできない。
今までも請け負ったことのある仕事なので心配いらないと華月は安心させるように笑って請け負った。



「よ〜し、できたよ〜」

輝夜の呼びかけに卓袱台の上を片づけ、台布巾で綺麗に拭く。
二人分の食器と箸を用意した所で、輝夜が鍋を持ってやって来た。
鍋掴みで蓋を開ければ、白い湯気と梅の香りが食欲をそそった。

「うわ、美味しそう」

眼を輝かせてはしゃぐ華月に、輝夜は嬉しそうに胸を張った。

「苦しゅうないぞ、遠慮せずに食うがよい」

二人して熱い雑炊をはふはふと食す。
時折、視線が絡み合い自然と笑みを交わす。
幸せな風景。
華月はこの時を忘れまいと心に刻み込んだ。
例え、輝夜がこのことを忘れてしまうことがあっても、自分は最後の瞬間までもこのことを忘れずにいようと。
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