目が覚めれば見慣れた天上で、そこが自宅だと知った。

朝早くからやって来た輝夜は華月に何ひとつ自分でする事を許さなかった。
朝餉を用意してくれた輝夜を見て身を起こそうとすればそのままでと止められ、粥をすくう匙も華月の手には触らせない。
ふぅふぅと熱を冷まされた粥を口に運ばれる。
食事を終えれば、薬を飲まされ傷の手当を受ける。
それらを輝夜はこの上ない微笑みを絶やすことなく、優しい口調で行うのだ。
けれども、機嫌は最悪なのが華月には分かる。
華月が分かっているということを輝夜も分かっている。

「え〜っと…怒ってる…のかな…?」

恐る恐る華月が問えば、「何のこと?」と極上の笑みが返る。

「あ〜…えっと…」

微笑んでいるのに目が笑っていない。
布団に横たわる華月の横に正座してにこにこと笑っている輝夜が恐い。
なまじ顔立ちが整っている分、余計に恐い。
その底知れない微笑みが空気をこの上なく重たいものにしているのだ。
華月はひとつ大きく息を吐くと、輝夜の視線を捉えた。

「…心配かけてごめんなさい?」

「何故に疑問系なのかな〜?」

輝夜の笑みがより一層濃くなり、室温が2、3度下がったような気がする。
彼がここまで不機嫌になることは今までなかったから、華月はどうしたらよいのか分からなくなってしまう。
華月は思わず布団を引き上げ顔を隠した。

「華月〜?なんで顔隠すのさ?」

「輝夜が恐いから」

くいっと布団を引かれるのを必死に押さえながら、くぐもった声で答える。

「…恐い…?俺が恐いって言ったの?」

あれ〜、耳がおかしくなったのかな〜?
そう言う輝夜の声が低くなり、室温が更に下がった。
力尽くで布団を矧がされれば、目前に輝夜の顔。
先ほどまでの仮面のような微笑みは消え、不機嫌をこの上なく現している表情で華月のことを睨んでいる。
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